(読めばわかりますが、これは、まだ《横浜》が《大洋》と呼ばれていた時代。そして、星野監督が第1期中日政権時代のお話です。当時の星野さんは、今のようにマスコミに露出せず、カリスマ監督として恐れられていました。覚えてますか? )

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昨日に引き続き、中日・大洋の取材に横浜スタジアムにやってきました。
星野監督のマスコミ嫌いは、もう有名かもしれませんが、とにかく担当記者以外にはほとんど口をきいてくれません。
優勝が見えてきて機嫌のいいはずの今日も、選手が練習に出てきたあと、10分経っても、20分経ってもグランドに姿を見せず、ベンチ周りは、カメラの方列で相当異常な雰囲気になっていました。

で、怖いもの知らずの私は、ベンチ裏に偵察に行きました。
監督は、2〜3人の担当記者を相手におしゃべりしながら、大鏡の前で素振りをしています。
(なんだぁ、こんなところにいるじゃない。)と、覗き込む私に気づいた監督。怖い顔で
「なんや、イヤラシイな。覗くなぁ。 ! 」
ウッ ! …さすがに、ちょっとびびったのですが、(このくらいでへこたれてしまったら、二度と星野監督の取材はできんぞぉ。)と、自分自身を励まし、
「あっ、皆さんが待っていらっしゃるのに、どうなさったのかと思って見に来ました。」と言いますと、
「誰も、待っててくれなんて頼んじゃおらん ! 」
…まぁ、ここで並の神経の持ち主なら、あきらめてすごすご退散するのでしょうが、厚顔無恥の篠原さなえ、もう思いっきり開き直ってしまい、
「監督がいらっしゃらないものだから、皆さんすっかり暗い顔になっちゃって、ベンチ前がなんだか異様な雰囲気なんですよ。」
「それじゃあ、お前がスカート捲り上げてベンチに出てみい。天照大神じゃないが、きっと明るくなるぞぉ」
こんなスーパーセクハラ発言も、星野監督が言うと、ちっともいやらしくないものだから、みんな大笑い。
結局、昨日まで挨拶するのも怖かった星野監督とすっかり仲良くなってしまいました。

さて、その後も監督は、しばらくベンチに出る気配がなかったのですが、15分もしたころでしようか、突然私に手を差し伸べて
「さあ、一緒に手をつないで行こう ! 」
一瞬、監督と手をつないでベンチに出た自分の姿が目に浮かび、クラクラしてしまいました。(笑)
「監督、明日のスポーツ紙の一面に載りたくありませんから、ご遠慮申し上げます。」
「なぁんだ、つまらん。」
そういい残して、監督はみなの待つベンチの脇の裏口から、ニヤニヤしながら出て行きました。
スタンド入り口で待っていたカメラマンたちは、裏をかかれカメラを担いであわてて走っていきます。
(まるでいたずらっ子のようだなぁ。)
見ているこちらの口元もついつい緩んでしまいます。

というわけで、マスコミVS星野監督の勝負は、今日も一方的に監督の勝利に終わりました。
う〜ん、たいした役者だなぁ。
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