10年目の命日(2006年記)  
<NO4>
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人間、あまりにショックな事が起こると、それを拒絶しようという心理が働くらしい。
朝のショックな出来事を、まるで、『なかったことにしよう』と思っているかのように、
私は異常なぐらい明るく仕事をこなし、
その後、友達との待ち合わせ場所へ向かった。

実は、前日、その友達の家に遊びに行っている時、
彼女の知り合いから電話がかかってきた。
『来週社員旅行でグアムに行くんだけど、突然一人がいけなくなっちゃって。
誰か一緒に行く人いないかな?』
という、とんでもない電話だった。
そして、とんでもない事に、友達が、
「私は無理だけど、今、一緒にいる子がいけるかもしれないよ。」
と言って私に電話を渡す。
へ? 何言ってるの?
と思ったけれど、受話器を渡されてしまったら、仕事柄、明るく出でしまう私。(笑)
少し話をして、お友達に電話を変わると、
「楽しい人だから、是非友達になりましょうって。
彼の奥さんも来るから、明日会いに行こう ! 」
なんちゅう強引な!!
そうして、引っ張ってこられたわけだ。

もちろん、そんな知らない人たちとの旅行に参加しようなんて気は、さらさらなかった。
ただ、「お友達のお友達に会う」、という程度のノリで行っただけなのだ。
しかし、社長や奥さん、社員たちと楽しく話しているうちに、
気がつくと、旅行に行く事が既成事実のようになっている。
「でもでも、そんなつもりないし、最後の最後に断ればいいや。」
普通の心理状態なら、100パーセント、この段階できっちり断っていた。
でも、朝のショックな電話のせいで、どこか、頭の中の機能が麻痺していたらしい。

年の近い奥さんと盛り上がっておしゃべりしている間に
社長と社員がどこかへ行った。
と思ったら、戻ってきた時、私の名前の載った飛行機のチケット。
え?
『もう、断れないでしょ。』にっこり微笑む奥さん。
ひえ〜、ほとんど人さらいだ〜。
そう思いながらも、
「そっか、チケットに名前がかかれちゃったら仕方ないよな。」
と思っている私。
あ、ありえない。...(..)、

その5日後には、私はその知らない人たちの社員旅行で、グアムにいた。
頭の片隅には、常にAちゃんの事があるのだけれと、
「認めたくない」、「なかったことにしたい」という心理の方が強く
完全に、現実逃避していた。

そして、最終日。
その日までは、単に「知り合ったばかりの友達」だった社員の人と
帰りの日に、なぜか唐突に付き合う様な雰囲気になっていた。
あぁぁぁ、ありえない。...(..)、


…帰国、翌日。

セゾンから電話がかかってきた。
『よろしければ、明日筆跡を見にいらしてください。』
いよいよだ。
私は、彼女から貰ったFAXをカバンに収めた。

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